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「風に吹かれて――テントが世界を包む――」2015年(6月12日~22日)

 

 

 

テントは災害時に人々の安全と生命を守る器として、各種自治体、企業などによってしばしば用いられて来ました。そのようなテントの空間をアマチュア演劇の発想から一つの「文化」にまで発展させた劇団として「野戦之月」があります。本企画は、明治大学大学院「教養デザイン研究科」の教員と院生が中心となり、「野戦之月」に御助力をいただき、演劇用テントを和泉キャンパスに十日にわたって設置し、相互教育、ワークショプ活動の空間として利用するものです。

テント空間の魅力は、風や日差しなど自然環境との連続性にあり、また様々な創意工夫を加えられる自主性にあります。テントはまさに、内部と外部の間にある人工の「皮膚」のようなもので、一般の建物では生じ得ない「感覚」が生まれます。また、そのようなテントは、素人でも立てることができるなど、特別な技術や資産も必要としない利点があります。つまり、誰しもがゼロの状態から始められるのです。

毎日のイベント(午後6時~)以外にも、午後12時~6時まで沖縄を撮った写真家、大城弘明氏、森口豁氏の写真の展示も行っております。

 

大城明弘: 記憶のなかの「ンマリジマ=生まれ故郷」を訪ねる旅路に、レンズは終わることのないイクサの闇を捉える。沖縄戦最大の激戦地のひとつ、三和村福地に生まれ育った写真家が眼差す、戦争の爪痕と政治の倒錯。『地図にない村 (沖縄写真家シリーズ 琉球烈像 第4巻)』など。

 

森口豁: テレビ・ディレクターとして、写真家として、そしてひとりの〈ヤマトんちゅ〉として50年代より沖縄の離島を歩きつくし、祖国復帰へとむかう狂騒のかげで米軍統治下の不条理を生きる人びとの、声にならぬ叫びを捉えつづけた。『さよならアメリカ (沖縄写真家シリーズ 琉球烈像 第7巻)』など。

6/12(金) 「無法地帯」(踊り)

リュウセイオー龍

 

13(土)“Body Synergy” (明治大学リベラルアーツ研究所)

 

 自分の身体と出会ってみよう ( ワークショップ )

 

 14 (日)ソレイマニエ フィーニー アミール (千代田トレーディング株式会社代表取締役)+ ルーミー・バンド

 「イラン~ペルシア華麗なる美の伝統」

(講演+演奏)

 

15(月)仲里 効(映像/文芸評論家)

 

「沖縄、そのイメージの群島へ」

(講演+スライド上映)

 

16(火)桜井大造 (劇団「野戦之月」)

 

<テント芝居「考」わーくちょっぷ α 

『テント場 考』発題と発語の稽古>

 

17(水)

  山本 薫 (アラブ研究者、東京外国語大学非常勤)

 

18(木)

  魯 大鳴 (京劇役者/研究家)

 

「東洋演劇の実技と哲学について」(京劇の体験型ワークショップ)

 

19 (金)森永由紀 (明治大学商学部/教養デザイン研究科教授)

 

 ゲルで暮らすということ――モンゴルの遊牧から考え――」

 

(ビデオ/写真を用いた講義)

 

20(土)東野 真 (NHK、エグゼクティブ・プロデューサー)

 

 「学ぶ」をもう一度考える(映像+講義)(映像・資料プログラム)

 

 21 (日)桜井大造●森美音子(劇団野戦之月)<テント芝居「考」わーくちょっぷ β 『ガマ 考』試演と感想戦>

「簿明〜裂きひらからる家〜」

 

2015年 6月 12日(金)〜 6月21日(日)

展示13日〜12:00〜18:00

イベント毎日18:00〜21:00

明治大学和泉キャンパスメディア練前特設テント

参加無料

テント広告文

 

○ 6月12日(金)

「無法地帯」(踊り)

構想・踊り手:リュウセイオー龍

<プロフィール>

1995年、10歳で野戦の月『バンブーアーク 阿Qの陣』で舞台デヴュー。以降、現在に至るまで野戦之月海筆子、独火星の全公演に出演。2004年<Ryuseioh Dance Project>を立ち上げ、ソロ・ダンス公演『動く銅像』で広大な海に漕ぎ出す。06年にはEast Asia Tour Performanceに参加、ソウルをはじめ韓国の各地で踊る。10年、東京Plan-B、広島アビエルトにて『白い煙と黒い影』を公演。12年から〈跳舞の空間〉シリーズを開始。同年7月に障碍者劇団〈Pan〉とともに『空想の脳』を韓国ソウルで公演。Plan-Bでは年1回のソロ公演を続け、14年に台北の野外劇場にて、15年にはPlan-Bにて『泥壁』を公演。

 

サビついた空き缶の向こう側に/何が見えるのだろう。それは地図のようだ。そこには幾筋もの道筋がある。その一筋を辿っていこう。

 

● 6月13日(土)

”Body Synergy”

テーマ:自分の身体と出会ってみよう(ワークショップ)

 

 

確かに、自分の身体は自分のものです。ですが、ちょっとした怪我をしたり体調を崩して、自分の身体が自分の意志ではどうにもならない、というような経験をします。もしかしたら、自分の身体は自分の意識に対する「他者」なのかもしれません。今回のワークショップでは、自分自身の身体とあらためて出会い、そして、その身体を通してことば以前のコミュニケーションを経験していただきたいと思っています。簡単なダンス的な動きをしてもらいます。でも、全然難しくはないです。身体を通して自己や他者とのコミュニケーションのことを考え直したと思います。

 

<プロフィール>

グループのプロフィール:グループ名は”Body Synergy”です。2014年度から明治大学教養デザイン研究科に設置されている特定課題研究所、「明治大学リベラルアーツ研究所」の研究グループのひとつとして活動しています。主要メンバーはダンスの経験者や現役のダンサーですが、まったく違う専門の者もたくさんいて、月一回の定例ワークショップを行っています。

 

 

○ 6月14日(日)

タイトル「イラン~ペルシア華麗なる美の伝統」(講演+演奏)

講師:ソレイマニエ フィーニー アミール

(千代田トレーディング株式会社代表取締役)

<プロフィール>

4代に渡りペルシャ絨毯の制作に携わる父と日本人の母の間に産まれ、9才までイラン ラシュトで幼少期を過ごす。その後 高校まで日本で育ち、ニューヨーク市立大学で音楽を専攻。2005年ミーリー工房日本総代理店、千代田トレーディング株式会社入社。今年8月には銀座和光ホールにてミーリー工房ペルシャ絨毯 イベントを行う。

演奏: ルーミー・バンド

ルーミー・バンド

<プロフィール>1999年にスィアーヴァシュ・アーリヤンファル氏を中心に結成。イランの古典楽器を使って、ペルシア語神秘主義詩人モウラーナー・ジャラールッディーン・ルーミーの哲学的=精神的な世界観を表現することをめざす。六本木などでのライヴ演奏とともに、瞑想やスーフィズム(イスラーム神秘主義)の所作・ダンスを伴ったパフォーマンスも行う。

<テーマ趣旨>

遊牧民のテントの必需品である絨毯は、イラン高原の地において、匠たちの誇りをかけて今日の「ペルシア絨毯」の美を培ってきました。ソレイマニエ氏のご厚意により、特別な絨毯展示と、その古来の工法の再現に努めてきたミーリー工房のご説明をいただきます。さらに、神秘主義詩人ルーミーの精神世界を音楽で表現するバンド四名による古典音楽のライヴ演奏もあわせてお楽しみください。

 

○ 6月15日(月)

タイトル「沖縄、そのイメージの群島へ」

(講演+スライド上映)

講師:仲里効

<プロフィール>

1947年沖縄大東島生まれ。法政大学卒。批評家。1995年に雑誌『EDGE』(APO)創刊に加わり、編集長。主な著書に『悲しき亜熱帯』(未来社、2012年)、『フォトネシア』(未来社、2009年)、『沖縄イメージの縁(エッジ)』(未来社、2007年)など。

<テーマ要旨>

軍事の眼、観光の眼、社会運動の眼、さらに民俗学や言語学からポストコロニアルまで、日本と台湾のあいだに群れをなし、アジアに開かれた琉球弧の島々には、これまでいくつもの眼差しが集まり、分厚いイメージが作られてきた。そしていま、歴史の転換点を刻むように<南>がざわめきはじめている。そのざわめきを聴き取り、沖縄をめぐる眼差しのポリティークとイメージの群島に映画と写真によって探訪してみたい。

 

● 6月16日(火)

 

「テント芝居「考」わーくちょっぷ」

 

講師:桜井大造(劇団『野戦之月』)

<プロフィール>

この10年は、東京の『野戦之月』、台北の『海筆子』,北京の『流火』の3つのテント芝居グループにて活動。芝居の費用は観客からの収入と参加者の自己負担による。これまで各地域の各種助成金も受けたことはない。自律的なアマチュアリズムを標榜している。2015年夏秋には「野戦之月」が東京地区にて、秋には「流火」が北京にて、来年春節には「海筆子」が台北にて公演を予定している。

<テーマ趣旨>

・15日<テント芝居「考」わーくちょっぷ α 『テント場 考』発題と発語の稽古>

「わーくちょっぷα」では、2つの切り口から、テントという「場」を「考」える。すなわち、「個」と「集団」の現在的関係とは何か? 現在「表現する」とは何か? 若干の討論後に参加者全員による「発語の稽古」(歌と朗読)。

講師:桜井大造、森美音子(劇団『野戦之月』)

・21日<テント芝居「考」わーくちょっぷ β 『ガマ 考』試演と感想戦>

「わーくちょっぷβ」では、15日以後、希望者による事前の「自主稽古」を行なう。これを中心とした構成にて、沖縄の「ガマ」をテントに招来し、「テント ガマ」において試演する。後に感想戦を行なう。

 

○ 6月17日(水)

「「アラブの春」と広場文化」(講演)

講師:山本薫(アラブ研究者、東京外国語大学非常勤)

<プロフィール>

アラブ文学研究者。東京外国語大学ほか講師・研究員。東京外国語大学でアラビア語を学び、シリアとエジプトに長期留学。アラブ文学に加えて、映画や音楽といったポピュラーカルチャーについても研究・紹介を行う。共著に酒井啓子編『〈アラブ大変動〉を読むー民衆革命のゆくえ』東京外国語大学出版会、2011年など。

<テーマの趣旨>

2011年1月のチュニジアを皮切りにアラブ諸国に広がった、長期政権打倒を求める市民運動、いわゆる「アラブの春」から約4年。運動の現場では、一体何が起きていたのか。広場や路上で繰り広げられていたアートやパフォーマンスを、当時の写真や映像を通じて追体験することで、創造性と機知に溢れたその市民的抗議の新たなスタイルが、世界各地で変革を求める人々に送った力強いメッセージの意義を、あらためて考えてみたい。

 

○ 6月18日(木)

「東洋演劇の実技と哲学について」(京劇の体

験型ワークショップ)

 

講師:魯大鳴(ルー・ダーミン/ろ・だいめい)

<プロフィール>

京劇俳優。1958年中国北京生まれ。「北京風雷京劇団」でプロ俳優として活躍したあと、1987年に来日。日本での京劇普及に取り組む。京劇教室や講演の開催、能役者との共演、宝塚歌劇団での演技指導、NHKの教育番組「テレビで中国語」出演など多方面で活躍。明治大学でも中国語や京劇の授業を担当中。著書に『京劇役者が語る京劇入門』駿河台出版社、『京劇への招待』小学館、『京劇入門』音楽之友社、等。

<テーマ趣旨>

東洋演劇は、近代西洋とは違う発想から成り立っています。中国の京劇や日本の能楽の演技の根底には「個性は醜い。美は普遍的で没個性であるはず」「真のリアルさは写実とは違う」「演劇の本質は再生呪術である」などの暗黙知的なコンセプトがあります。京劇のプロ俳優である魯大鳴先に歌や演技の型を実演していただきつつ、われわれ東洋人の本来の人間観、世界観についてわかりやすく解説します。演劇に興味のない人もぜひどうぞ。

 

○ 6月19日(金)

テーマ「ゲルで暮らすということ ――モンゴルの遊牧から考え――」(ビデオ/写真を用いた講義)

講師:森永由紀(明治大学商学部教授)

<プロフィール>

専門は気候学、環境科学。日本女子大学卒、筑波大学大学院地球科学研究科中退(理学博士)。人間の居住限界での暮らし方に興味がある。院生時代は北アルプス剣沢、ネパールヒマラヤ、南極、チベットでフィールドワークを行った。現在の研究テーマはモンゴルの遊牧地で馬乳酒の伝統的製造法の科学的検証を行っている。

<テーマ趣旨>

草と水を求め家畜とともに移動する「遊牧」という営みは、土地を広く薄く利用するため、環境への負荷が小さいことが注目される。歴史的にみると、時に自然災害により家畜を大量に失うことがある一方、農耕限界を超えてダイナミックに生活圏を拡大した。20世紀以降世界的に定住化が進む中、モンゴルの草原で生業として数千年続けられてきた遊牧民のゲルの移動生活を通して、人間が、あるいは生き物が暮らすということについて考える。

 

● 6月20日(土)

「学ぶ」をもう一度考える(映像+講義)(映像・資料プログラム)

映像作品: 「学ぶことの意味を探して~神田一橋 通信制中学の歳月~」

 

講師:東野真(ひがしのまこと)

<プロフィール>現職・NHKエンタープライズ 制作本部 情報文化番組、エグゼティブ・プロデューサー。「日中戦争?なぜ戦争は拡大したのか?」(2006年[平成18年]2月9日放送)で芸術祭最優秀賞。

<テーマ趣旨文>

「“学ぶこと”は私たちの義務なの、権利なの?」。現在日本では2人に1人が大学に進

学しています。皆さんもその1人です。大学で「学ぶ」ことを選択したことをもう一度考えてみませんか。アジア・太平洋戦争後の混乱で学ぶ機会を失った人が全国で2校しかない夜間中学で学んでいることを5年に亘り追いかけたドキュメンタリーです。

人が学ぶ姿をカメラを通じて、もう一度見つめませんか。

● 6月21日(日)

16日の続き(ワークショップⅡ)

「簿明裂きひらからる家」

作・演出・森美音子

簿明〜裂きひらからる家・キャスト
カマド➖森美音子
ウシ➖春山恵美
ツル➖押切マヲ
ナベ➖みりん
タカ➖桜井大造
クーミー➖浜村篤
セミたち➖ゼミ生
ミゴモリ➖丸川哲史
ジラマ➖申源
バトウ➖リュウセイオー龍
ヒヅメ➖ばらちづこ

風に吹かれて

テントは世界を包む2016

本企画は台湾で発明された葬式用テントを

転用した約一週間の教育実験の広場です。

固定した建物では得られないもの

風、日差し、雨さえ私たちの感覚と対話するでしょう。

「災い、転じて福と為す災害時のように

テントは誰によっても建つものです。

特別な技出も体力も資産さえも不要。

その変わりに皆様の参加、協力、創意を求めています。

5月30日「月」「音楽は旅をする ~「移動音楽論」からみた日本の近代化
西洋音楽の受容と翻案をストリートの視点から振り返る 」
講師 : 大熊ワタル

演奏 : ジンタらムータ

ペリーとともに黒船から上陸した軍楽隊は、まさに軍事技術として導入されたが、次 第にアトラクション
や宣伝の音楽へと変容、街頭に浸透していった。 一方、歌謡では、明治政府は早々と伝統音楽を捨て、西洋音楽の全面的導入にシフトした。張り切る外国人 教師や宣教師たちと、あくまでキリスト教は排除したい官僚のせめぎ合いの中、すべり込んだ讃美歌などが、 現代に至るまで日本の歌謡に大きな葛 藤・影響を及ぼした。
大熊ワタル(クラリネット・作曲)
80年代から前衛ロックバンドで活動開始。 20代半ばでチンドン屋に入門、街頭でク ラリネットを修行。現在主宰する「シカ ラムータ/ジンタらムータ」の、実験性 や即興性、ストリート感覚を活かした独 自の音楽性で国内外に知られる。また映 画音楽や演劇など領域を超えて活動中。 著書に「ラフミュージック宣言~チンド ン・パンク・ジャズ」など。
ジンタらムータ
クラリネット奏者・大熊ワタルと、新世 代チンドン太鼓奏者・こぐれみわぞうを 中心に2000年代前半に結成。 90年代から活動中の、チンドン×ジャズ ×ロック×現代音楽=超ミクスチャーバ ンド「シカラムータ」の別バージョンと して始動。ライブハウス、フェスティバ ルから、路上パレード・デモまで国内外 で公演多数。
 
「Goods Talk:芸術・クラフト・オミヤゲの脳内シャッフル 美術・文学・観光・人類学のチャンプルー」

講師 : 中村和恵
アフリカ、カリブ海、オセアニア、そして日本の北方へ。
世界各地の物語と文化を、「モノ」をきっかけに、のぞき見かじり聞きして
いただく円座を設けます。やばかわいい岡本光博の「赤毛袋」から、アフリ カン・プリントの布、アボリジナル絵画、フィジーのカヴァ・ボウルなどを ご覧いただき、これはなに? どこからきたの? なぜこんな? にお答え します。世界は端っこから見るに限る。物語は歩いて知るに限る。球体探索 へシャッフル!
 中村和恵 : 法学部教授,教養デザイン研究科担当 詩人、エッセイスト、比較文学者。
 「世界」の端っこやマイノリティ、日本人のポジションについて、考えながら歩く人。
 著書に詩集『天気予報』(紫陽社)、エッセイ集『地上の飯』(平凡社)、『日本語に生まれて』(岩波書店)、 共著論集『世界中のアフリカへ行こう』(岩波書店)、翻訳『ドラゴンは踊れない』(アール・ラヴレイス著、 みすず書房)などがある。
 6月1日「火」「ディアスポラ・アートから見える世界」
講師 : 徐京植
 ディアスポラ(離散民)の視線で見ると、世界は違って見えてくる。
しかし、そのことを言語で十全に表現することはできない。なぜな
らディアスポラとは言語(文化)の狭間を流浪して、文化の自明性
に疑いを投げかける存在だからだ。この点に、ディアスポラ・アー
トに着目する意義と、面白さがある。
徐京植 : 1951年京都生まれの在日朝鮮人。 東京経済大学で「芸術学」と「人権論」を講義する。主な著書に、『新版
プリーモ・レーヴィへの旅』『ディアスポラ紀行』、『汝の目を信じよ‐統 一ドイツ美術紀行』、『私の西洋音楽巡礼』、『越境画廊』などがある。

6月2日「木」

「ユーラシアの多様性、過去・現在・未来」
 講師 : 川野明正・羽根次郎
 ユーラシア大陸には民族と宗教が豊かな歴史的重層性をもっていきづいて いますが、単に博物館の中だけでは論じられません。たとえば、チベット、 雲南、タイに繋がる地帯では「メコン流域開発」が問題化し、またかつて 東西交流史の舞台であった中央アジアでは中国主導の「二つのシルクロー ド構想」が鋭くかかわっています。本講義は、ユーラシアの多様性を「移 動」「開発」「交流」などのキーワードとともに考える講座です。

川野明正

専攻:中国民俗学 著書:『中国の〈憑きもの〉─華南地方の蠱毒(こどく)と呪術 的伝承』風響社、2005年 『雲南の歴史─アジア十字路に交錯する多民族世界』白 帝社,2013年など。

り、2010年より中国社会科学院近現代史研究所にてポストドクター。2013年に帰国、 愛知大学現代中国学部助教を経て本学専任講師。専門はユーラシア東西交流史、現 代中国社会論。

6月3日「金」

「沖縄現代史から何を学ぶか ――方法としての〈アジア〉、方法としての〈沖縄〉――」

講師 :若林千代
沖縄現代史は、単に日本の一地方の、あるいは一つの行政県の 歴史ではない。沖縄現代史を考えるということは、アジア現代 史を考えるということであり、世界史を考えるということであ る。沖縄における米軍占領の27年間に焦点をあてて、その歴史 的主体と政治社会の形成をたどりながら、そこから見えてくる 〈アジア〉について考えてみたいと思う。

若林千代:沖縄大学法経学部教授
津田塾大学学芸学部国際関係学科在学中、単位交換派遣 学生として沖縄大学で学ぶ。津田塾大学大学院国際関係学 研究科博士後期課程修了。博士(国際関係学)。主著として、 『ジープと砂塵――米軍占領下沖縄の政治社会と東アジア 冷戦、1945〜1950』(有志舎、2015年)。

6月4日「土」

「試演「水滸(みずのほとり)譚――ある水辺から―― 」
劇団 : 野戦之月海筆子・教養デザイン研究科院生

今回の試演ではテント空間を、ある海と川のほとりと設定し、そこに 一時人びとが流れ着くような試みをやってみたい。テーマは「帰還」 である。参加者の国籍、年齢、位置が多様になる為、おそらく一人ひ とり違うものを背負っているであろうが、過去や現在の世界、社会、 個々の状況と向き合いながら、私たち「類としてのヒト」はどこに帰 還していくのかを考察してみたい。テント空間が、わずかにでも撓 (しな)ることを願う。
劇団「野戦之月海筆子」

1994年の旗揚げ以来、テント劇を持続してきたゆるやかな集団。東京を拠点に日本全国各地、海外では台湾 や北京、韓国でもテント公演を行っている。代表は桜井大造。近年の活動としては2011年秋、被災地石巻4カ所、 首都圏3カ所にて『フクビキビクニ譚』。2013年5月、東京夢の島公園において『蛻(もぬけ)てんでんこ』を 上演。2014年9月、東京夢の島公園において『百B円 神聖喜劇』を上演。2015年8月、横浜寿町と東京隅田公園 山谷堀広場にて『ぐぁらん洞スラム 正伝』、9月東京立川にて『ぐぁらん洞スラム・モール』を上演。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 

 
 
 
 

「試演「水滸(みずのほとり)譚――ある水辺から――」

キャスト

ロマ:森美音子
セイハリ:みりん
アーク:リュウセイオー龍
アオ:申源
ユール:趙東旭
キューゾー:丸川哲史
王さん
飯塚さん
ツバキ:ばらちづこ
パリ:押切マヲ
オノ:桜井大造

特定課題講座風に吹れてテントは世界を包む2017

日 時: 5月29日(月)~6月3日(土)
(写真展示は各日12:30~13:30、講座は各日19:00~21:00)
会 場:明治大学和泉キャンパス(京王線明大前駅徒歩5分)、メディア棟横特設テント
主 催:
明治大学大学院教養デザイン研究科
協力:テント劇団
「野戦之月海筆子」
本企画は…  台湾で発明された葬式用テントを転用した約一週間の教育実験の広場です。  固定した建物では得られないもの——   風、日差し、雨さえ私たちの感覚と対話するでしょう。
「災い、転じて福と為す」
災害時のように、テントは誰によっても建つものです。
特別な技術も体力も、資産さへも不要。  
その代りに…
みなさまの参加、協力、創意を求めています。

第1回5月29日(月テーマ趣旨/講師紹介

音楽トーク「台湾のコンポステラ」+ダンス「『続無法地帯』地図から抜け出した地球儀」
講師:平井玄
音楽評論家。東京都立新宿高校時代に坂本龍一等と全共闘運動に関わる。1980年代には、雑誌『同時代音楽』の編集。著書に『彗星的思考』など。
篠田昌巳があっという間に世を去って25年。彼のサックスは今聴いても若すぎず、そして年老いない。彼のバンド「コンポステラ」 (ジャズ、ファンク、チンドンを跨いだ伝説バンド)はこの世界のどこか、その裏道をくねくねと巡礼の旅を続けている。初めて台北を訪れて、延々と続く夜市 の明かり、そこいら中にある路地や小店の連なり、怪しい霊廟の賑わいをそぞろ歩くと、コンポステラはこういう轍を残したのかと思う。台湾は瑞々しく若い。 その混沌の中で語りたい。
構想・踊り手:リュウセイオー龍
1995年野戦の月『バンブーアーク 阿Qの陣』で舞台デヴュー。以降、現在に至るまで野戦之月海筆子、独火星の全公演に出演。2015年の「風に吹かれてテントは世界を包む2015」「無法地帯」を初演。今回はその続編となる。
1枚の地図からさまよう道の夜空を見上げよう。ほら、星空が、瞬いている、あれが、コンポステラの星だろう。さぁ、星空の下で1つの
星のカケラになるのさ。
5月29日(月)音楽トーク
「台湾のコンポステラ」 +
ダンス「『続無法地帯』
地図から抜け出した地球儀」
講師: 平井玄
構想・踊り手:リユウセイオー龍
5月30日(火)
ドキュメンタリー上映<記憶の中のシベリア>+監督トーク
講師: 久保田桂子
司会:佐藤賢
5月31日(水)
「テントは細胞だ! アナロジーで考える場の重要性」
講師: 浅賀宏
6月1日(木)
「中平卓馬と沖縄」
講師: 倉石信乃 
「記録する運動—阿波根昌鴻の伊江島土地闘争記録写真集『人間の住んでいる島』を読む」
講師: 新城郁夫
6月3日(土)
前説「魯迅のアレゴリー世界」 +
試演 「幻燈三千世界—阿Q氏の帰還 」
講師:丸川哲史
監修・演出:桜井大造
(劇団 野戦之月海筆子)
                                   

第2回 5月30日(火)テーマ趣旨/講師紹介

​​ドキュメンタリー上映<記憶の中のシベリア>+監督トーク監督:久保田桂子 ➊『祖父の日記帳と私のビデオノート』(2013年)❷『海へ~朴さんの手紙』(2016年) http://siberia-memory.net/ 計り知れない戦争の記憶—祖父たちの世代が体験したその記憶を、何気ない日々の生活と四季の移ろいが映し出す風景からささやかに描き出した、珠玉のドキュ メンタリー。久保田桂子は美術大学で劇映画の製作を学んだ後、ドキュメンタリーの制作をスタート。日常を繊細に捉える視点とエッセイを読んでいるような独 特の描写が評価され、座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル・コンペティション部門で大賞受賞。司会:佐藤賢(明海大学)

第3回 5月31日(水)テーマ趣旨/講師紹介

​​講演「テントは細胞だ! アナロジーで考える場の重要性」講師:浅賀宏昭教養デザイン研究科(ヒトを中心に考える生命科学)ボーイスカウト活動で馴染んだ経験があるせいか、今でもテントに入るとワクワクする。なぜだろう。テントは膜構造建築物の一種で、一 枚の膜が重要な働きをしている。似た例は自然界にも少なくない。私たちの体に数十兆個もある細胞もそうだ。1㎜の十万分の1という想像を絶する薄さの細胞 膜に小孔をあけるだけで、生命を維持できなくなる性質がある。なぜだろう。この機会にアナロジーで人間と生命の場について考えたい。

第4回 6月1日(木) テーマ趣旨/講師紹介

講演「中平卓馬と沖縄」
講師:倉石信乃
明治大学理工学部総合文化教育〔近現代美術史・写真史」
中平卓馬(1943-2015)は1960年代後半から先鋭的な写真家・批評家として活動し始める。1973年、ある冤罪事件の裁判 支援のために初めて沖縄を訪れる。「復帰」直後の沖縄が曝されている悲惨な状況を閑却し、観光と開発を謳歌する「本土」のあり方を、中平は痛烈に批判す る。他方、その鮮やかな自然風土や文化に深く魅了され、事物の働きかけを画然と受けとめる、新たなカラー写真の叙述形式を獲得していく。ここでは、沖縄と いう抵抗体への支持を貫いて身体化した、中平卓馬のプラクティスを振り返りたい。

 

第5回 6月2日(金) テーマ趣旨/講師紹介

講演「記録する運動—阿波根昌鴻の伊江島 土地闘争記録写真集『人間の住んでいる島』を読む」
講師:新城郁夫
宮古島生まれ、琉球大学教授。沖縄/日本文学・思想、著書に『沖縄を聞く』(みすず書房)、『まなざしに触れる』(鷹野隆大との共著、水声社)、『沖縄の傷という回路』(岩波書店)
1950年半ば、沖縄北部の先にある伊江島で生起した米軍基地強制接収に抵抗する、阿波根昌鴻を軸とする伊江島の人々による土地闘争 の可能性を、その写真記録を読むことを通して考える。その際「境界の可視化」「座ることと行進すること」「文字を撮る」「見る人たちを見ること」という4 つの視点を設ける。奪われつつある「今」を記録する抵抗が、生きていることの未来化となり、生の条件を形づくっていくことを、写真のなかに感受していく。

第6回 6月3日(土) テーマ趣旨/講師紹介

前説「魯迅のアレゴリー世界」+試演「幻燈三千世界—阿Q氏の帰還」
講師:丸川哲史
教養デザイン研究科
野戦之月海筆子(ヤセンノツキハイビィーツ)
1994年の旗揚げ以来、テント劇を持続してきた集団。東京を拠点に日本全国各地、海外では台湾や北京、
韓国でもテント公演を行っている。代表は桜井大造。
魯迅が仙台の留学先の教室で観たという「幻燈」、その中で公開処刑にされる<同胞>——それが原光景。
そこから魯迅は 「狂人」や「阿Q」が見る「夢」を発明した。
今回の試演会は四月に北京のテント劇団「流火」による中国人民大学試演と連動する。…私たちの見ている現在の 日本(アジア)の「現実」は果たして「悪夢」のように
進行しているようだ。
この「現実」をもう一度、魯迅が発明したプリズムを使って凝視する。つまり、 私たちはむしろ「夢」の次元から出発し「現実」を作り直してみるべきなのだ。
特定課題講座「風に吹かれて―テントは世界を包む 2018」
6月11日(月)~16日(土) 
毎回18時半開場19時スタート 
@明治大学和泉校舎特設テント
主催/明治大学大学院教養デザイン研究科 協力/テント劇団「野戦之月」
 
6/11(月) 
講演「自分を好きになる禅のヒント」講師:笠倉玉渓(人間禅)
禅は自己の位置づけを「縁起」という調和理論に見出し、全体と自己との関係性を明らかにする。他者承認に頼る若者の漠然とした不安感へのヒントとして禅を紹介したい。

6/12(火) 
講演「神話と共同体《プロメテウスとしてのヴァン・ゴッホ》」講師:上岡誠二 (芸術活動家)
共同体を夢見て「人間たちの血にまみれた神話」となったゴッホの太陽に焼かれて、いくつもの試みが行われた。その情動と可能性をバタイユの体験を手がかりに考えたい。

6/13(水) 
講演「セトラー・コロニアリズムとアメリカ合衆国――不可視化される先住民族
と核開発」講師:石山徳子(教養デザイン研究科「平和・環境」コース)
アメリカの核開発を、先住民族の身体と文化の「消去」を前提にしたセトラー・コロニアリズムの構造と連動したプロセスとして捉える。

6/14(木)
学術ワークショップ「石川啄木を語る夕べ―留学生の報告と映画等を通して―」
コーディター:池田効(教養デザイン研究科「文化」コース)
石川啄木は、18ヶ国に翻訳されている国際的な文学者でもある。大いに啄木について語っていただく夕べにしたい。

6/15(金)
ドキュメンタリー映画+討論会(「大テント―想像力の避難所―」)
監督:陳芯宜(映像作家、台湾テント劇団「海筆子」メンバー)
コーディネーター:羅皓名(教養デザイン研究科博士後期課程、「海筆子」メンバー)
    コメンテーター:丸川哲史(教養デザイン研究科「平和・環境」コース)
テント劇は台湾において「想像力の避難所」となった。「台湾海筆子」によるテント活動の台湾での十年に渡る足跡、及び日本や北京などにおける活動の軌跡について紹介します。


6/16(土) 
ワークショップ試演会「イーハトーヴの鍵」 (テント劇団「野戦之月」+教養デザイン研究科教員&院生)  
脚本=森美音子、ばらちづこ、
丸川哲史、監修=桜井大造
かつて古代中国人は「天」を正円として、「地」を正方形としてイメージしていました。今回の試演会はそのような、人類の原初的感覚にいざなう試みとなるでしょう。 
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